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名古屋高等裁判所 昭和46年(ま)1号 決定 1971年12月08日

請求人 伊藤義人

決  定

(請求人・代理人氏名略)

右の者から、当裁判所が右の者を請求人(控訴人)とする没収の裁判取消請求事件(当裁判所昭和四六年(収ほ)第一号)について、昭和四六年九月一日言い渡し、同年四月一七日確定した没収の裁判を取消す旨の判決にもとづき、当該没収物返付の請求があつたから、当裁判所は、請求人および検査官の意見を聴いたうえ、次のとおり決定する。

主文

被告人山本貢稔ほか三名に対する兇器準備集合等被告事件(名古屋地方裁判所昭和四五年(わ)第五八四、第五九六、第九一六各号)につき、名古屋地方裁判所が昭和四五年九月一四日言い渡し、同年同月二九日確定した判決により没収せられた日本刀一振(前同裁判所昭和四五年押第一五七号の証第七号)を請求人に返付する。

理由

請求人の本件請求の趣旨、ならびに理由の要旨は、要するに、名古屋地方裁判所は被告人山本貢稔ほか三名に対する兇器準備集合等被告事件につき、昭和四五年九月一四日「押収にかかる日本刀一振(同裁判所昭和四五年押第一五七号の証第七号)を被告人山本貢稔から没収する」旨の判決を言い渡し、該判決が、昭和四五年九月二九日確定したところ、同判決中、右の没収の裁判に関し、請求人の請求にかかる没収裁判取消請求事件につき、名古屋高等裁判所は昭和四六年九月一日、前同判決中、「前記日本刀を被告人山本貢稔から没収する」旨の部分を取消す旨の判決を言い渡し、該判決が昭和四六年九月一七日確定した。そして、当該日本刀は、請求人の所有であり、現在名古屋地方検察庁に保管中であるから、これを請求人に返付する旨の決定を求める、というのである。

所論にかんがみ、本件刑事補償請求事件記録、および当裁判所昭和四六年(収ほ)第一号、没収裁判取消請求事件記録を調べると、被告人山本貢稔ほか三名に対する前記被告事件につき、名古屋地方裁判所が、昭和四五年九月一四日、「押収にかかる前記日本刀を被告人山本貢稔から没収する」旨の判決を言い渡し、該判決が同年九月二九日確定したこと、名古屋高等裁判所が請求人の請求にかかる没収裁判取消請求事件につき、昭和四六年九月一日、前記日本刀が請求人の所有に属する旨を認定のうえ、前記判決中、前記日本刀を被告人山本貢稔から没収する旨の部分を取消す旨の判決を言い渡し、該判決が昭和四六年九月一七日確定したこと、該日本刀が、現在、名古屋地方検察庁において保管されていることをそれぞれ認めることができる。そうとすれば、前記日本刀一振は、これを請求人に返付すべきものである。

よつて、請求人の本件請求は理由があるので、刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法第一三条第九項、刑事補償法第四条第六項、第一四条、第一六条前段を適用して、主文のとおり決定する。

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